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TOCのパラダイム

今までの生産性改善

企業の目的は何か? 「現在および将来に渡って儲け続けること」である。利益は売値から原価を引いたのもだ。売値は市場で決まる。従って、利益を上げるためにはコストダウンをしなければならない。コストダウンを実現するためには生産性の改善をしなければならない。これが利益に対する基本的な考えであった。

コストダウン計画の例;

  • 工数削減:3分の短縮で賃率60円/分なので180円のコストダウン

  • 設備のスピードアップ:1個あたり0.3分の短縮。設備賃率100円/分なので30円のコストダウン。

  • 外注化:内製のコストは150円だが外注に出すと100円。従って50円のコストダウン

合計260円のコストダウン計画である。この製品の売値が60円下がる見込みであるが、コストダウンによって1個あたり200円の利益増を見込む。

この製品の来期の生産数は100,000個である。従って、20,000,000円の利益増となる。これが従来のコストダウンの考えである。

コストダウンと利益の乖離

上記の生産改善活動が高度成長期を通じて今日でも尚、製造現場の基本原則となっている。このコストダウンが日本製造業の強みの一つと考えられてさえいた。右肩上がりの時代は、コストダウンと利益の関係にあまり疑問は生じなかった。しかし、規模の拡大が終わった1990年以降、コストダウンと利益の関係に乖離が見られるようになってきた。コストダウンはまあまあ進んでいるのに利益は減っていく。新製品を矢継ぎ早に出して何とか売上げは維持してはいる。いったいなにが起きているのだろうか。

原価計算

利益を見積もるとき製品の1個の売値から1個の原価を差し引く。製品1個の原価を出すのが原価計算である。1個原価は、

製品1個の原材料費+製品1個の償却費+製品1個の労務費+製品一個の間接費+ + +

となる。

上記の例で、1個あたり3分の工数削減は180円のコストダウンと計算する。問題は実際に労務費が減ったかどうか、である。人を解雇したならば、労務費は確かに減る。しかし工数削減をしたからといって人を解雇することはまれである。人を解雇しないのであれば、コストダウンは実現していないことになる。設備のスピードアップはどうだろうか。スピードアップすることで償却費は減っただろうか。むしろ改造に費用がかかったかもしれない。30円のコストダウンとはどの費用が減ったのだろうか。外注化はどうか。外注先に1個当り100円の費用を払わなければならない。内製していたときの設備、作業員等はどうなったのだろうか。ほとんどそのままの場合が多いのではないだろうか。経費の削減はあまりなく、外注費が増えることになり、コストダウンどころか、コストアップにさえなっているのである。

どうやら、われわれの生産性改善のメカニズムに重大な欠陥があるようだ。

原価計算の欠陥

原価計算が考え出された20世紀初期は、冶工具や簡単な機械を使い、人手が中心の製造であった。作業者も出来高払いで雇われていたため、製造費用は生産数にほぼ比例した。もちろん固定費はあったが、全体から見ればほんの僅かであり、その費用を製品1個1個に配賦しても大きな誤差は生じなかった。

その後製造は設備の大型化、高度化が進んだ。また機能の分業化、専門化が進み、いわゆる間接業務が増大した。作業員は、パートなど多少柔軟性のある就業形態はあるものの、出来高払いのように生産数に比例して増減することはない。今や、生産数量に比例しない費用は50%を超え、企業によっては80%を超えるところもある。

生産数量と比例しない費用を製品の原価として配賦すること事態理屈に合わないことであるが、その費用が費用全体の大部分を占めるようになった現在、配賦することによる不合理は日常の生産活動に重大な影響を及ぼすまでになっている。

スループット計算

企業の費用構造が大きく変わってしまったにもかかわらず、一世紀前に考案された原価計算を使うことによる弊害を解決するため、TOCはスループット計算という新しい意思決定法を提案している。

スループット計算は次の三つの評価尺度を使う。

  • スループット(T):会社が販売してキャッシュを生み出す速度

  • 在庫(I):会社が販売する製品を作るために使うものを購入する費用

  • 業務費用(OE):会社が在庫をスループットに変換するために費やす費用

スループット(T)は売上げから材料費や外注費などの変動費を差し引いたもの。純利益(NP)と投資利益率(ROI)は次のようになる。

  • 純利益(NP)=T−OE

  • 投資利益率(ROI)=(T−OE)/I

従来の原価計算とスループット計算の主な違いは、

   スループット計算

    原価計算

費用(償却費、人件費、光熱費、間接部門費など)

製品(在庫仕掛りを含む)に配賦しない。

製品(在庫仕掛りを含む)に配賦

制約

制約を認識する

制約を認識しない

製品ミックスの最適化

可能

できない

個別原価

存在しない

個別原価を算出する

利益

T−OE

売値−原価

 

利益の改善と生産性の改善

企業の目標は「現在および将来に渡って設け続けること」である。そのために機械の稼働率を上げたり、工数を削減したりして生産性を上げようと努力しているのである。ところが、生産性改善の努力は、原価計算をベースに行われるため、利益の改善に結びつかないことが多いのである。そこでスループット計算をベースにした生産性改善の有効性が認識され始めたのである。

生産システムの能力は何で決まるか。一番能力のない工程で決まる。これは、鎖の強度は一番弱い環で決まるのと似ている。この一番能力のない工程を「制約」と呼び、これがシステムの能力を決めている重要な場所である。資材供給者やマーケットも含めた範囲でシステムを捕らえれば、制約は物理的なものだけではなく、マーケットそのものであったり、資材供給能力であったり、あるいはコストダウンの進め方に関する方針であったりする。

今、製造工程の中に制約があるとする。この工場の生産量はこの制約で決まる。この制約工程でのロスは工場全体のロスである。逆に、この制約工程の改善は工場の改善となる。今、工場の生産量を増やせばそれだけ売上げが増える情況なので、この制約工程の改善に取り組む。それ以外の工程の改善は工場の生産量を増やすことはないのでやっても意味はない。制約工程の改善は、先ずはお金のかからない方法を実施する。例えば、昼休みを交代して稼働させるとか、チョコ停対策をとるとか、である。制約工程を止めないように、その前にはバッファーを置き、その後ろには後工程が止まった場合のスペース・バッファーを置く。   

制約工程の前に置くバッファーは、材料投入工程から制約工程までにかかる時間(バラツキを含めた時間)に相当する分である。材料は制約工程の速さに合わせて投入する。制約工程の速さを決め(ドラムでリズムをとる)、材料投入工程とロープで結び同期させる。この方式をドラム・バッファー・ロープと呼ぶ。

 
改善の進め方は5段階継続的改善プロセスに従う。

  1. 制約条件を見つける。

  2. 制約条件を徹底的に活用する。

  3. 制約条件以外を制約条件に従属させる。

  4. 制約条件の能力を向上させる。

  5. 惰性に注意しながら1に戻る。

 

利益改善の順序 (制約が工場内にある場合)

1、製品ミックスを決める。

  市場の需要をすべて満たせないので、どの製品を作り、どの製品を作らないかを決める。優先順位は、

  [ 製品のスループット ÷ 制約工程での加工時間 ]

  を求め、その値の大きい製品を優先して製造する。

2、スループット(T)を増やす。

  5段階継続的改善プロセスに従いスループットの増大を図る。

3、在庫(I)を減らす。

  在庫が減ることにより、リードタイム短縮による短納期受注、タイミングの良い新製品の市場導入など将来の売上増につながる。また倉庫費用、運搬費用、資金コストなど業務費用の低減が図れる。

4、業務費用(OE)を減らす。

  業務費用の削減は、ややもすると、労務費削減のためのレイオフに走ったりしがちであるが、従業員のモラルの低下など逆効果もあるため、利益改善の対策としては優先順位は一番低い。

 

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