なぜ、出せるはずの利益が出ないのか
Necessary But Not Sufficient
エリヤフ・ゴールドラット 著
三本木 亮 訳
四六判並製344ページ
定価1600円(+税)
10月10日配本
システムを導入しただけでは、
利益にはつながらない。
なぜなら、何もルールが変わっていないからだ!!
近年、企業は生き残りを賭けて多額のIT投資を行なった。だが、切り札となるはずだったITを導入しても、多くの企業が利益を生み出せずに喘いでいる。
ゴールドラット博士は「IT投資によるテクノロジー装備だけでは、利益向上にはつながらない。なぜなら、何もルールが変わっていないからだ」――と、警鐘を鳴らす。
コンピュータシステムとは本来、組織の活性化、また利益などパフォーマンス向上を図るために用いられるべきである。そのパワーがコンピュータシステムにはある。
しかし、それには以下の質問に答えることができなければならない。
1.
コンピュータシステムの真のパワーとは何か?
2.
コンピュータシステムを用いると、どのような限界が取り除かれるのか?
3.
これまでの限界に対応していた古いルールとは何か?
4.
どのような新しいルールを用いればいいのか?
5.
ルールの変化に合わせて、コンピュータシステムにどのような変化が求められるのか?
(「日本語版への序文」より抜粋)
(ストーリー)
在庫削減を目的にERPを導入。だが、むしろ在庫は増え、利益を圧迫している――いったい、なぜなんだ!?
はたして、クライアント企業の悲鳴を解決できるのか!?
コンピュータソフトウェア企業BGソフト社を舞台に、新ソフト開発、販売、フォローアップ過程でのさまざまな疑念、抵抗、危機、葛藤……さまざまな障壁乗り越え、他社が真似することのできない競争優位を確立するまでを描く。
目次
「日本語版への序文」エリヤフ・ゴルードラット
T バグ
U 利益的貢献
V 最適化
W 決断
X 大芝居
Y 本当の始まり
訳者あとがき
*********************************************
佐々木 俊雄
ゴールドラット博士の「ザ・ゴール」「ザ・ゴール2」に続く第3弾、「チェンジ・ザ・ルール!」三本木亮訳(原題;Necessary But Not Sufficient)が2002年10月にダイヤモンド社から出版された。
物語は1998年1月24日、ERPソフト会社BGSoftの社長Scottのオフィスから始まる。ここ数年、年率40%の成長を続けてきたBGSoftも、ERPの大企業への導入が一巡したことで、今後も今までのような成長を続けることが難しくなってきたことにScottは悩み始める。そうなれば株価を維持するのも危うくなる。ERPが入っていないところが多い中規模企業が次のターゲットだ。しかし、ERPを導入する時間と労力は大企業のそれとあまり変わらないにもかかわらず売上は小さい。今のままではビジネスとして成り立ちそうにない。
BGSoftのパートナー、システム・インテグレーターのKPI
Solutionsは、BGSoftの問い合わせに対するレスポンスの遅さにいらだっている。客からの要望を次々と追加し、ソフトは巨大化そして複雑化していく。そんなソフトの全体の構造を正しく理解している人などいない。もうほとんど手におえない状態だ、とBGSoftは弁解する。
ある日、大事な顧客であるPierco社から呼び出しがある。Piercoで進行中のプロジェクトは幸運にも予算も日程も予定通りで、思い当たるふしはない。何事かと訝りながらScottとKPIの社長Maggieが出向く。Piercoの社長Craigは、最近入ったディレクターが320百万ドルの投資に対してどれだけのリターンがあるのかと詰問する、というのだ。それに対してどう答えればよいのか、ScottとMaggieに助けを求めて来たのである。Maggieは早速資料をめくり、1件当りの事務処理費用は12.7セントだったものがERP導入後3.2セントに下がり、処理数を掛けたら膨大な経費削減になる、と説明する。経理資料もすぐに出るようになったし、散在する倉庫の出荷情報が生産計画に反映されるのに3週間かかっていたのが今ではその日のうちに製造で把握できるようになったし、、、。しかしそれが利益にどう結びつくのか、という点でCraigには納得のできる説明にはなっていない。
「テクノロジーを売るのではない。バリューを売るのだ。」客にとってERPを導入することの利は何か? Craigへの解答を求める喧々諤々の議論の末の結論は、売上伝票処理日数の短縮、一括購入処理による材料費の低減、在庫の削減、品切れの減少による売上の増加であった。なんとか投資に対するリターンの説明はこれでつく。
しかし、新たなマーケットを模索するScottには上記のメリットが中規模企業にも当てはまるのかが気になる。一項目づつ検討してみた。みんなの意見は、中規模企業には大企業ほどのメリットはないという結論になろうとしていた。その時、営業担当から、我々の顧客で小規模ではあるが我が社のERPを使って3年で3倍の規模に成長した企業がある、との話が出てきた。Stein Industriesという会社である。
早速、Stein Industries社を訪れ何が起こっているのか話を聞きに行った。社長のGeraldはドラム・バッファー・ロープを取り入れたことを明かす。ERPの中でボトルネックのスケジュールができるようにコード変換プログラムの依頼が来たが、その意味をBGSoftの担当者は初めて理解するのである。また、Geraldの言外に企業のカルチャー・チェンジの重要性と難しさを感じ取るのであった。
ドラム・バッファー・ロープを実現するAPS(Advanced Planning and Scheduling;先進的スケジューリング)モジュールの調査が始められた。APSを開発している会社を訪問。実際にそのAPSを使っている企業の紹介を頼んだ。そのうちの6社を訪問。6社すべてに共通していることは、APSソフト会社が意図したこととは異なった使い方をしていることと、どのように使うかについて充分なコンセンサスを得ていることであった。そして、オペレーションの全体を考え直し、基本的なルールを変えたのであった。
Technology is
a NECESSARY condition, BUT it’s NOT
SUFFICIENT.
TOCによる企業変革のプログラムと共に、APSモジュールを組み込んだEPRをPierco社に導入した。その結果工場の生産は40%も増えた。しかし今度は、流通の在庫が増えるという問題が発生する。工場内のシステムからさらに流通をも含めた最適化の問題の解決は、原材料から商品までの複数の企業を結ぶサプライチェーンへと発展していく。独立した企業間をつなぐルールはあるのか?これからのソフトウエア会社はソフトウエアとそのメンテナンスを売る商売から「必要な情報をいつでもどこでも必要な形で取り出せる、情報提供サービス業」へ転換しては、というPierco社の提案は、サプライチェーン実現への始まりでもある。
2000年の7月、ミネソタ州セントポールで「TOC WORLD 2000」が開かれていた。400名を超える人々が企業から、コンサルティング会社からそして大学から集まっていた。当時日本では「TOC」はあまり知られていなかった。日本から参加したのは私一人であった。
「TOC WORLD 2000」は、熱狂的な拍手で迎えられたゴールドラット博士のキー・ノート・スピーチで始まった。「Is this understood? Yes or no?」と聴衆に問いかけながら、博士のスピーチはエネルギッシュで小気味が良い。
−高価なERPを導入している企業はたくさんあるだろうが、それによってボトム・ラインが改善された企業がどれだけあるか、ほんの一握りの企業だけだ。何故か。企業はあるルールで動いている。そのルールはERP導入前の企業運営に適したものだ。そのルールのままで、飛躍的に向上した情報処理能力を持つERPを導入してもなんの効果もない。情報処理のスピードが速くなっただけだ。企業の業務スピードが速くなったわけではない。業務スピードを決めているのは古いルールなのだ。−
2000年の7月は、博士が「Necessary But Not Sufficient」を書き終えた時期である。キー・ノート・スピーチはそれのイントロダクションでもあった。
OPTとというコンピュータ・ソフトから始まり、重要なのはソフトそのものではなく、背後にあるシステムを動かす考え方である、というところに行き着く。その考え方を「TOC」と名づけ普及活動に注力するようになる。そして再びERPというコンピュータ・ソフトに突き当たる。ソフトを入れただけでは効果は出ないのだ。背後にあるシステムを動かすルールが大事なのだ。OPTという生産管理のソフトからERPという企業全体のソフトに規模は大きく拡大したが、ソフトと業務運営ルールとの関係は相似である。さらに複数の企業を含むより広範囲なサプライチェーンにも同様な関係が存在するはずだ。TOCの適用範囲を拡大し、発展させようとするゴールドラット博士のチャレンジは続く。キー・ノート・スピーチの壇上でのエネルギッシュな姿を思い出した。
HOME トピックス/セミナー 書籍・文献・資料 PAGE TOP