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TOCICO バルセロナからのレポート−バイアブルビジョンの詳細が明らかに  
ゴールドラット博士の「Viable Vision」セミナー参加レポート(すぐ下)

ゴールドラット博士の「Viable Vision」 セミナー参加レポート

コロラドの4月は冬と春と夏が同居する。2,3日前は鋭い初夏を思わせる日差しが照りつけていたが、4月23日は芽吹きだした若葉が見え隠れはするが、あたり一面の銀世界。全米各地から集まった人たちの挨拶の中にも雪の話題が入り混じる。ゴールドラット博士のセミナー「Viable Vision」開始前のコンチネンタル・スタイルの朝食風景である。

150名の参加者の中で、日本からは私だけ。ゴールドラット博士の話を直接聞くのは、「TOC World 2000」以来4年ぶりである。その時のゴールドラット博士の基調講演は「Necessary But Not Sufficient」。迫力ある博士の話に度肝を抜かれ、また魅了されたものだ。「Necessary But Not Sufficient」はその後同名のタイトルで博士の第4弾目の「小説」として出版され、2003年には日本でも「チェンジ・ザ・ルール」として邦訳が出た。Viable Visionの「小説」は出版されるのか? セミナー後の博士の話では、今のところ本の出版はなさそうである。 (注;Gerald I. Kendall著 Viable Visionが2004年10月にJ.Ross Publishingより出版 、2005年4月邦訳版が日本工業新聞社から出版)

 Viable Vision(実現可能な将来像)」と何か? 企業の利益を4年以内に現在の売上高と同額にする、というものだ。多くの人は「そんな事は非現実的だ」と思うであろう。博士がこれまで手がけてきた幾多のTOCの導入事例の中にはこのような飛躍的な利益増加をもたらした事例が半数を超えるという。博士にとっては実にViable(実現可能)なのである。

前置きが終わると博士は、米国ジョージア州にある海軍のメインテナンスセンターと英国公立医療機関(NHSNational Health Service)傘下のいくつかの病院の事例に入る。どちらも不確実性が支配する大規模で複雑な組織だ。メインテナンスセンターではすべての領域で予定通りメインテナンスを終えることができるようになり、そのサイクルタイムは半減した。またNHS傘下の病院では患者の待ち時間が大幅に減少し、治療を受けた患者数も増加した。

 しかし、その解決方法は当たり前なことばかりだ。だから「そんなのは常識だ。なぜ今までやらなかったのか?」という反応を示す経営者は多い。

 「なぜ今までやらなかったのか?」というほどの当たり前の方法と、「不確実性が支配する複雑な組織の業績を飛躍的に上げる」こととのギャップに多くの人が戸惑うのはなぜだろうか。

 複雑なシステムは本質的にはシンプルなのだ、ということに多くの人が気づいていないだけなのだ。この本質的な単純性を利用することで、信じられないような結果が短時間で実現できるのである。

 「本質的な単純性」とは何か?

 これを説明するためには、「複雑なシステム」とは何か、を明らかにしなければならない。システムを説明するのに必要なデータが多ければ多いほどシステムは複雑である。4行の説明で事足りれば単純である。千ページも必要だというのなら、それは複雑だ。

 あなたの会社はどのぐらい複雑だろうか? 仕事のやり方や顧客とのやり取りの方法などの記述に何ページ必要だろうか? 小さな企業でもかなり複雑なものだ。そして複雑なシステムを管理するということは難しいことなのである。

 それでは、われわれは複雑な組織を管理するのにどのようなことをしているだろうか? サブ・システムに分けるのである。サブ・システムそれぞれは、全体よりは複雑ではない。あなたの会社の組織図を見ればおわかりいただけるはずだ。

 サブ・システムに分けることは代償を伴う。同期がとりにくくなり、部分最適に走りやすくなり、時には組織がたこつぼ化する。この代償を最小化することにわれわれは大部分の労力を費やしているのである。

 サブ・システムに分けることが唯一の選択肢である限り、短期間に大幅な利益増加をもたらすこと、つまり「売上高を4年以内に利益額にする」など、非現実的だと思うのは無理はない。

 企業が持つ潜在的な能力を引き出すためには、複雑性というものを理解する必要がある。企業の中の一部分で起きたことは他の場所にもその影響が波及する。この因果関係がシステムを迷路のようにし、企業組織の管理を難しくしているのである。しかし、これこそが解決への鍵なのだ。

 システム全体に影響を与えるポイントが10点もあれば管理するのは難しい。自由度がありすぎる。野良猫集団を管理するようなものだ。しかし、それが1点であれば、ひとつの自由度しか持たないシステムであり、管理するのは簡単である。

 システムの中の様々なコンポーネント間に相互依存関係があればあるほど、システムの持つ自由度は少なくなるということはお分かりいただけると思う。企業の各部門の複雑な依存関係をみると、企業全体を支配する数少ないポイントが存在するはずである。すなわち、システムが複雑であればあるほど内在する単純性が重要な意味を持つのである。

 内在する単純性を利用するためには、システムを支配する数少ないポイント(レバレッジ・ポイント)を見つけ出さなければならない。このポイントと企業全体のパフォーマンスとの因果関係がわかれば、より高いレベルの業績を実現するようシステムを管理することが出来るのである。

 具体的には5段階継続的改善ステップであり、コスト・ワールドからスループット・ワールドへのパラダイムシフトであり、パラダイムシフトを起こすための思考プロセスである。

 どんなシステムであろうと、単純性に着目すれば、業績の大幅な改善結果が得られる。20年前、「ザ・ゴール」ではこのことを生産システムで示した。プロジェクトベースでの改善例は「クリティカル・チェーン」で、マーケティングや戦略については「ザ・ゴール2」で、そして3年前に「チェンジ・ザ・ルール」で産業界全体についての改善例について書いた。

 多くの経営者は、いまだに単純性の概念に気がついていない。結果、複雑極まりない解決策に没頭し、驚くような改善が手の届く範囲にあることを理解しないのである。

 セミナーの締めくくりは、配電線メーカのSuperior Cablesが劇的な業績回復を遂げた事例である。「どのような方法で実現したかわかりますか?」という挑戦的な博士の質問に、名案らしきものが飛び交うが、どれも空を切る。言われてみれば「そんなことで?」と思った人も多いに違いない。答えはディストリビューションへのTOC サプライチェーン・ソルーションの適用である。これとて、複雑極まりないサプライチェーンに内在する単純性を巧みに利用しているだけのことである。

 企業のKeyなる情報がわかれば「Viable Vision」は、博士の頭の中に鮮明に、しかも瞬時にイメージできるのだそうである。しかし、すべての企業が「売上高を4年以内に利益額に」を実現できるわけではない。「Viable Vision」実現へ、次のステップを踏む。

1、「Viable Vision」の作成(可能かどうかの判断含む)
2、経営陣のコンセンサスをとる
3、経営トップ全員が参加して「
Viable Vision」の実行計画を立案
4、導入

 ゴールドラット博士は現在、世界の各地で「Viable Vision」のセミナーを行っている。TOCにまた新たな1ページが加わることになる。TOCがますます面白くなってきた。

 レポーター;佐々木俊雄(2004年4月23日 米国コロラド州デンバーにて)

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