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トラブルと対策


ODD METER010 補助エアバルブホースの破れ

1.不調期間

オドメーターは「127928」の表示だが、これはこの整備完了時の表示となる。実に1年以上の間燃調が決まらず、そして不良箇所を特定出来ずにいた。約1年かかってやっと発見したのが、この補助エアバルブの2次側(インマニ側)のホースの破れだ。【オイルプレッシャースイッチ故障】は派手さでは最たるものだったが、このホース破れのトラブルほど長期に渡ってストレスに感じたものはない。

不具合の症状としては、アクセルをポンと抜いたときのアフターファイヤーだ。もともとターボはパラパラ音が多少するものであるが、ある時期から強烈な爆音を発するようになってしまった。隣を走る二輪のライダーが驚く程の音量と一瞬噴出す煙は、まさにバズーカ砲。そういった周りの走行に邪魔になってはいけないし、深夜の住宅地を走行するのも気が引けてしまう。

さて、アフターファイヤーの原因となるのは、混合気が薄過ぎることによる不完全燃焼だ。不完全燃焼のガスが排気管で熱せられて爆発するというものだ。混合気が薄くなるということは、エアの量が多過ぎるか、燃料噴射量が少な過ぎるかということになる。

911turboは964の時代3.6lバージョンまでKジェトロニック、もしくはその進化形のKEジェトロニックなど基本的考え方としては同じフューエルシステムを採用し続けた。Kジェトロニックに限って言えばほぼ100%機械的なシステムということもあり信頼性も高い。が、電気的な制御でないがゆえに、さまざまなパーツそれぞれが、燃調を適正にするために相互に関連しながら動いている。システム全体を捉えながら個々のパーツを診断しなければ、いつまでもバランスが取れないことにもなりかねない。

これらが燃料経路において相互作用し合っている。また、燃料ディストリビュータは混合気コントロールユニットとしてエアフローセンサと一体化しており、エアフローセンサで計測した空気量に応じて比例的・機械的に燃料噴射量を決定している。これら基本的な装置に加え、冷間時始動や始動後の暖機、走行中の負荷の増減などには次のような補機類がそれぞれのシーンに合わせて混合気を濃厚化させて対応している。

と、Kジェトロ解説はこれくらいにしておいて、不具合の症状をもう一度確認してみる。エンジン始動は問題なく、アイドリングもこの時点では正常。10分程走行していると爆発音が鳴り出す。緩やかにアクセルを戻せば避けられる。エンジンブレーキを掛けると連続してアフターファイヤーする。停車しようとする時には少し早めにクラッチを切って、エンジン回転数はアクセルペダルだけでコントロールする必要がある。急なブレーキが必要な場合などには、かかとを使って少しアクセルを煽ることでもしなければ、確実に爆発音だ。一言で言って非常に乗りづらい車になってしまった。ずいぶん長い期間だったため、傍目にはそういう苦労をしているとは思わないだろう、というくらいにその独特の作法に慣れてしまったが。

燃料ディストリビュータ脇の調整ネジで燃料を濃い目にセッティングすれば、多少爆発は緩和される。その分スロットルバルブ側のアイドル調整ネジは絞らなければならない。そうなると、暖機完了までの数分間というものは常にアクセルを踏む足から力が抜けない。少し開けてあげないとストールしてしまうのだ。これはまたこれで慣れを要する。合流や右左折での一旦停止時には、ギアをニュートラルとしブレーキペダルを左足で踏むか、またはヒールアンドトウで止まるか、あるいは極々遅いスピードであればサイドブレーキか、とこうなると普通に運転しているとは言えない状況で、固有の癖のある車などと笑ってはいられない。

燃料ディストリビュータ内のプランジャー動作不良でも、またウォームアップレギュレータの故障でも・・・とKジェトロのシステム構成パーツのそれぞれに疑いの可能性があり、また不良箇所が1箇所だとも限らないのが悩ましいところだ。つまりこれが、フューエルシステム全体を睨んで考えていかなければならないという意味だ。吸気系統の消耗パーツのパッキンやOリングなどは適宜新品と交換しているので、各所継ぎ手となる部分からのエアの吸い込みはあまり考えられなかった。手をつけていないところとすれば、インマニガスケットくらいか。

行き付けのショップでも訪問するたびに気を掛けて頂いた。911turboの不具合としてはあまり前例のないことでもあり、都合を見てテスト用パーツと交換しながら一つ一つ詰めていきましょうと提案してもらうと、少し気が休まる思いだ。高額な出費をしてパーツ交換する前に、テスト用の正常なパーツを使って改善するかどうかを確かめられることは本当に有難い。

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2.不具合箇所の発見

このトラブルシューティングとは別のメンテナンスで、インタークーラーやエアクリーナボックスを取り外していた時のことだ。それらを元に納めるにあたって、配管類の接続忘れや固定の緩みがないか一つ一つ確かめていたところだった。インタークーラーの固定前に補助エアバルブの固定にガタがないか、ホースバンドに緩みがないかと触っていたところ、スロットルバルブ下部へ接続されているホースの手触りが明らかにおかしいことに気がついた。外部からは目が届かないホースのちょうど裏側に亀裂があるようだった。

厄介な物を発見したなという思いがよぎったが、次の瞬間には、長い間苦しめられたトラブルの原因はこれに間違いないと確信した。早速ホースを取り外して調べてみると、通常何かと干渉するような位置ではないはずだがザックリと亀裂が入っている。しかし3層構造で補強されているホースは力を入れないと裂け目は広がらない。負圧が高まる瞬間にここからエアを吸い込んでいたのだろう。またブーストが掛かり始めた場合にもここからエアを逃がしてしまっていたのだろう。

替えのパーツは改めて注文するとして、自己融着テープで裂け目を補修し元の場所に納める。はやる気持ちを抑えながらすべてのパーツを正確に取り付け、目視確認した後エンジンを始動してみる。アイドリングがかなり高い。これは、少しでも乗りやすくするために燃料を濃い目に調整していたせいだろう。正しくは排ガステスターを使っての調整となるが、燃料調整ネジ、アイドル調整ネジの両方を絞ってゆき900rpm付近となるようにセットした。暖機完了後に不定期にバラつきのあったアイドリングも、本来のスムーズさを取り戻している。数度空ぶかしを行ったが、アフターファイヤーは発生しなかった。

試運転に出かけ、多少ラフなアクセル操作を行ってみたが問題ない。また、エンジンブレーキを使ってもアフターファイヤーは起こらない。そしてブーストが掛かった時の加速が全く違うのに気がついた。ターボの加速も慣れてしまうと・・・と思っていたが間違いだった。やはりこの時代のターボはドッカンというのが正しい。エンジンブレーキも気兼ねなく併用出来るからこそ、この加速も味わえるというものだが・・・。こうして、煩わしい操作や常に付きまとうストレスから解放された。

物陰となって目が届かない場所の思いもしなかった部分の損傷だったが、自ら発見、症状を改善出来たことは気持ちも晴れたし、勉強にもなった。ホースについた僅かな傷が、常に圧にさらされることで徐々に広がっていったものかも知れない。たった3000円程の小さなパーツが、さまざまな弊害を起こしていたのだ。

目で見て確認だけでなく、いろいろと触ってみることが大事だ。内外装を洗車によって触ることで傷みを早期発見、ということと同じだ。しかもメンテナンスは基本的に素手でなければダメだということを、改めて感じた。軍手をはめたようなあやふやな触感では手元も狂うし、今回のようなホースの亀裂発見は出来なかっただろう。

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補助エアバルブホース.01

エアバルブの2次側のホース

補助エアバルブホース.02

取外した裂け目のあるホース



(追記)

件のホースだが、どうやらその製法上、今回亀裂が入った部分は弱い造りとなっていることが、ホースをよく観察することで解った。一枚ものの薄いゴム板を丸めて筒状溶着したように、目を凝らせばホース外周1箇所に継ぎ目が筋となって見える。亀裂は丁度この筋に沿って入っている。

弱いと書いたが、10万km以上持ったゴムホースだ。意外と強かった、と表現するべきかも知れない。

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