初めて生簀を作ったとき・・・・
思い起こせば、生簀作りを始めて、二十数年になります。最初は山女魚の稚魚を放流するのに簡単な水槽から始めました。生物濾過の知識など、全くなかった僕は受精卵から折角、育てた山女魚の稚魚を何百と殺したことがあります。その当時は濾過するとは汚い水を漉すだけと思っていた僕は生簀に入れた山女の稚魚たちが2週間経ったある日、突然もがき苦しみ、死んで行く様をはっきりと覚えています。どうすることも出来ませんでした。僕が我流で考えた濾過槽は今の濾過装置と余り変わりませんでした。しかし、それが、バクテリアが水を綺麗にしてくれるとは知らずに、アンモニアや亜硝酸の存在すら知らなかったのです。山女魚を河川に放ち、育てるつもりがとんだ事になり、魚たちに悪いことをしました。
自然の仕組みは良く出来ています。櫓材の変わりに石ころや砂、岩、木、土、サンゴ、流れ、波などが酸素を運び、バクテリアを育てて、水を綺麗にしていくのです。自然を壊さなければ何時までも綺麗な水は生き物を育てていくのです。
濾過槽もその自然の仕組みを真似て、バクテリアの力を借りているに過ぎなかったのです。
それから、数年かけてリュックを背負い、人知れない山奥の渓流に数万の稚魚を放流しました。今も尚、その子孫たちがひっそりと世代を交代していることを願ってやみません。

折角、釣った魚、美味しく頂こう!
マイボートを持った釣り人であれば、誰でも一度は自宅に釣った魚を活かして好きな時に新鮮な魚を食べれたら良いだろうな?と考えた人は多いのではないでしょうか?
ところが、これは思ったより、大変な仕事なのです。
釣った魚を腫れ物に触るようにキズ付けないように大事にして、疲れた体にムチを打ち、海水を汲み上げ、エアーを吹かして運搬し、又、キズ付けないように自宅の水槽に移します。
言葉で語ると簡単ですが、美味い魚を食らうためにはそれなりの努力と覚悟が要るのです。

我が家では一年中、四季の魚が泳いでいて、御客人が舌鼓を打ってくれます。美味い魚を食べるとそんな苦労は吹っ飛んでしまいます。

生簀の製作

以前、180センチのアクリル製の活魚用の水槽に熱帯海水魚を飼っていましたが、この設備を一式、 新品で全部揃えるとなると180万円程、かかります。これではとても賢い遊びとは言えません。
そこで、現在、我が家にある安価で簡単に出来る生簀を紹介ましよう!

1.水槽
生簀で何が一番、高いかと言うとアクリル製の水槽です。これは営業用つまり、料理屋等のお客さんに生きた魚を見せるために特別に誂えた水槽です。かえって、横から魚が見えないほうが良い(毎日、横から魚の表情を伺っていると愛情が移って食せなくなる)ので、既製のコンテナを使うことで、随分節約できます。水漏れさえなければ、何でもよいのです。 例えば、いらない風呂桶とかでも可能です。私は約1トンの海水が入るサンボックス#1000を使っています。大漁を期待しすぎて大きすぎた感があります。場所を取ってかないません(笑)。
釣ってくる魚の量や、置き場所を考えると#200か#400で十分です。青物を入れるのなら、面積 の広いBOXを選ぶべきです。
このコンテナボックスはいろんなサイズがあり、加工もしやすいので便利です。

品番 容量 内寸 外寸 材質
#75 77.2 410x510x315 456x556x326 PP クリーム
#100 104 440x540x380 500x700x410 PP オレンジ・ブルー
#200 209 560x800x480 640x880x515 PP オレンジ・ブルー
#400 410 700x1.000x600 790x1.090x540 PP オレンジ・ブルー
#500 503 1.230x755x550 1.340x865x585 PP オレンジ・ブルー
#1.000 1.010 1.580x1.100x590 1.700x1.240x730 PP オレンジ・ブルー



2.重松式生物.濾過槽装置
濾過槽は生簀で一番重要なアイテムです。ここで、魚から排出される糞尿やアンモニアをバクテリアが分解して亜硝酸に、さらにバクテリアが硝酸塩に分解して、魚の有害物質を和らげます。
濾過槽には上部式とオーバーフロー式と密閉式があります。オーバーフロー式は水槽は常に水面の高さを常に一定に保つ長所がありますが、場所を取るのと、極端に海水が蒸発して減ったときに、気付かずにポンプが損傷するおそれがあります。密閉式は音が静かである長所がありますが、設備が大げさになりますので、ここでは取り上げません。上部式は海水が蒸発して減った分、水面も下がりますが、海水がある限り、浄化を続けます。それに、水槽の上に載せるだけで、場所をとりません。ここでは加工も簡単な上部式を紹介します。

濾過装置も同じようにコンテナを用います。#100か#200を用いると良いでしょう。水槽の水の約三分の一程の容量のコンテナを4分の一くらいのところを仕切って二部屋にして、その仕切りの下の方にたて三センチくらい、横水槽の幅より少し短めの細長い穴を開けて、濾過した海水の通り道をあけます。海人式濾過装置では上の写真のように2室に仕切らすに、パイプを利用して、その中にもう、ひとつパイプを設けて、オーバーフローで浄化した海水を落とします。こうすれば、濾材の面積が多く取れ、それだけ小さい濾過槽で浄化能力が増したことになります。それにパイプを中央に持ってくれば均等に濾材に海水を通すことが可能になってきます。一次濾過で、フィルターで、ゴミや、大きな汚れを取った海水はその下の特砂やサンゴ砂に宿ったバクテリアにアンモニアや亜硝酸塩を食われて浄化された綺麗な海水は仕切り版の下を通ってオーバーフローして、左のパイプから下の水槽に落ちていきます。
一番下にスノコを敷き、木炭を乗せてサンゴ砂を15センチから20センチほど敷きます。濾材の深さ15センチか20センチの間にバクテリアの80パーセントが定住すると言われています。

3.ポンプ、冷却装置
濾過槽で綺麗になった海水は水槽に落ちて来て、再び、ポンプで濾過槽まで、押し上げ循環させます。近海の魚は海水温を15度から20度に保つ必要があります。
そこで必要になってくるのが、ポンプとクーラー、ヒーターです。
ポンプは耐海水性と長寿命のマグネットポンプを使います。このポンプは優れもので、ロックボ−ルバルブ等で、流量を制限することも出来ます。非常に耐久性に優れ、我が家では10年間休まず、使ってもまだまだ、平気で回っています。
次に、クーラーですが、アクリル水槽に劣らず高価です。夏の3ヶ月を避けるならば、無くても可能ですが、予算に余裕があれば、是非ともそろえたいアイテムです。管理がグッと楽になり、一年中、快適な飼育が可能になります。
クーラーがあれば、夏の間でも15度〜17度に保つことも可能です。水温が低ければ、病気も出にくくなり、魚の活動を抑えることで、酸素の消費も少なくなり、水中に溶け込む酸素の量も増加します。それにサーモスタットは大体、クーラーに付属しているのでヒーター用も買わなくても済みます。
冬場のヒーターですが、耐蝕性に優れた高性能なチタンヒーターやプラボードヒーターなどがありますが、いずれも高価になりますので、熱帯魚用の500Wヒーターでも熱帯魚みたいに水温を上げる必要が無いので、十分だと思います。

4.捕獲
一番、大事なことは魚を釣った時に大事に扱うことです。魚種によって扱い方が違うので、これが一番大切なことです。魚が生きるか否かはこのことで決まると言っても過言ではありません。釣魚が鯛や瀬に付いている根物の場合は釣り上げたら海水を含ませたスポンジの上に横たえ、尻から、エアーを抜きます。イサキなど、回遊性の魚はエアー抜きの必要はありません。鯵、鯖等の青物の場合は、手で触っていけません。ハリ金などで、針を引っ掛け、手でさわらずに生簀に直接落とすようにします。もし、手で触ったり、船床に落とした魚は例え、元気が良くても、生簀に入れずに〆てクーラーに入れて持ち帰り、その日の内に食しましょう!青物で手で触ったり、床に落とした魚は2〜3日後にはヒレや魚体がボロボロになったり、内出血して必ず、死にます。魚は大事に扱えば必ず、応えてくれます。
あとは釣られて、運んで相当ストレスで参っていますが次の日は元気になります。運んできて2日目か3日目が一番、食べごろです。大体1週間が目安です。それ以上,おいて置くと身がやせ始めます。一週間以内に食べましょう!白身の魚は〆たばかりを食べてください。なんとも言えない滑らかな舌ざわりと香りを感じることができます。青物は少し、時間をおいたほうがうまみは増すようです(本当に魚油の良い魚は青物でも〆た直後の方が美味いです)。生簀を造ると贅沢になって、他の魚が食べれなくなりますよ!ご用心!


5.運搬
現在はピックアップのトラックで250リットルの鮮魚用の水槽を積んで13リットル/分で最高風圧1.0kgf/m2のポンプをDC12で回しています。エアーストーンは30Φで30g毎分です。飽和酸素の量は水温が低いほうが良いのですが1〜2時間くらいであれば特別に冷やさなくても問題ないとおもいます。トラックで運ぶ場合は真夏は水温が上る場合もあるので、水量を多くするか、凍らせたペットボトルを入れると良いと思います。氷でも多少塩分が薄くなってもかまいません。バンとかワゴンみたいな車の車内に積む場合はクーラーを利かせておけばより良いです。僕の場合はポンプは車内に置いてエアコンの冷気を送り込んでいます。エアーレーションは沢山してあげればかなりの量の魚を持ち帰ることができます。多いときは6〜7キロクラスの鯛を3枚と3キロクラスの鯛三枚、小鯛を数十枚一緒にもちかえったこともあります。大切なことは帰ったときに生簀とのタンクの水温の差に気をつけてください。いきなり入れると失神します。

6.バクテリアの養成.保守、点検
さあ、生簀が完成しました。しかし、いきなり沢山の魚を入れてはいけません。未だバクテリアが育ってないからです。先ずはベラやアラカブなど、比較的強い魚(亜硝酸に)をパイロットフィッシュとして何匹か入れてください。そして餌もあげてください。海水が綺麗な最初の内は元気なのですが、2週間程経つと糞尿からアンモニアが蓄積して、それを食べるバクテリアが現れます。アンモニアは亜硝酸に分解されます。この亜硝酸は魚にとってとても有害なのです。沢山の魚や弱い魚を入れると死にます。その内に有害物質亜硝酸を喰うバクテリアが現れて、硝酸塩に分解してくれます。ジット耐えたアラカブや、ベラは再び、餌を捕るようになるでしょう。そうするとおよそ水の出来上がりです。少しずつ、魚を増やしましょう。バクテリアの数も増えてきます。逆に魚が減るとバクテリアの数も減ります。魚を沢山、消費したときも1.2匹の魚(雑魚で結構です)は残しておきます。そうすると、バクテリアが居なくなることはありません。
水が出来てからも、一度に沢山の魚を入れすぎると海水は白く濁ります。このときはバクテリアが不足している時です。魚を少し、減らしてジット待っているとまた、バクテリアが増えて来て、透き通った綺麗な海水に戻ります。
濾過装置の点検はマメにやってください。一次濾過装置のフィルターが詰まらないように点検して、流れが悪いときは洗ってください。この時、海水で洗うと折角、住み着いているバクテリアを殺すことはありません。バクテリアはサンゴ砂等のマクロに広がる穴の表面積に居着いているのですが、
当然、フィルターにも居るわけです。
海水の交換は世間で言われているほど、神経質になることはありません。濾過装置が完璧であれば極端な話、半年変えなくても大丈夫です。しかし、良いコンディションを保つためには少なくても魚を運ぶ際に少しずつ、交換してください。我が家では、一ヶ月か、二ヶ月に一度は3分の1程、変えているような(気)がします。(笑)

7.その他の便利アイテム
配管などは塩ビ管で、アーロン接着剤で作ります。生簀や、濾過槽に穴を開け配管するときはフィッティングを使うと便利です。ここでは便利アイテムを紹介します。

エアーストーン
これはプラスチック製で、微細な泡が大量に放出する。耐久性もバッチリで穴も詰まりにくい。
僕は9番の30Φの15リットル毎分を使っている。能力の大きい方が何かと良い。ポンプの能力に合わせないと効果がない。
ロックボールバルブ
プラスチック製で錆びないし、固着もしない。流量が自由に調整できる優れもの。少し、高価だが船の海水道設備にももってこいである。
フィッティング
生簀や濾過層からの配管に威力を発揮する。水漏れも無く、自由に配管で出来る。まことに便利である。
チタンヒーター
コンパクトで、衝撃にも強い。耐蝕性にも優れている。
高価なので、普通は熱帯魚用の500Wでも十分である。
3キロワットまである。参考まで。
サーモスタット
ヒーターとクーラーと両方を制御するすぐれもの。
クーラーで付属で付いている。
水中ポンプ
海水を汲むときに用いる。淡水用のものだが、潮抜きさえ、ちゃんとやれば、十分使える。海水専用のステンレス仕様のもあるが、高価である。トラックにインバーダーを積んで使っている。
鮮魚運搬用のタンク
これと同じ、250リットルタンクを使っている。500までだったらダブルキャブに乗るのだが、そんなに魚を釣りきらないのでこれで十分。透明の蓋は中の魚の様子が見えるので便利。(写真は1000リットル用)