高台寺 傘亭・時雨亭
(重要文化財)

こうだいじ かさてい・しぐれてい
京都市東山区下河原町
市バス東山安井下車徒歩10分

 京都東山の山腹にある高台寺は、秀吉夫人北政所が秀吉の菩提を弔うため、慶長10年(1605)頃に建立された寺として知られる。何度かの火災によって、当初のものは、霊屋(おたまや)、開山堂、表門、観月台とこの両亭のみである。

 高台寺東側、奥の一番高まったところに、傘亭(北側)と時雨亭(南側)が吹き抜けの土間廊下でつながれて建てられている。この二亭は、伏見城の遺構という説や、利休の意匠であるという説があるが、いずれも確証はない。
 平屋の傘亭と二階建ての時雨亭を渡り廊下でひとつにまとめた構成は見事としかいいようがない。この二亭は、茶の湯のための空間ではあるけれども、いわゆる茶室とは違う。茶を点てて喫するという目的以外にも、酒盛りもあれば、歌に興ずることにも利用した多目的の庭園建築であったようであり、おそらくは、後の茶の湯の趣向に準じて改築されていったといわれている。

 傘亭はもともと安閑窟と呼ばれ、屋根は方形造り茅葺き、内部は竹を放射状に配した化粧屋根裏が傘の下を連想させる。南側に板の間の下屋が付き、主屋は八畳の広さの空間であるが、入口の前の一畳分は土間で、残りは畳が敷かれている。北西の一畳は上段の間となっている。入口の釣り上げ式の揚戸や、皮付丸太の太い柱など、野趣な構えである。

 時雨亭は入母屋造茅葺きの二階建てで、一階は大部分が土間で、残りの三畳分が板間になっている。準備室や控えの間としての利用だったと思われる。二階は土間廊下から階段を上って入るようになっている。すべて板敷きであるが、上下段に分かれており、下段は東側に床と手前座が作られている。天井は化粧屋根裏、床には円窓があけられている。時雨亭は二階の掛戸を突き上げると、大きく展望がひらけ、現在は木立が遮るが、かつては京洛の景を楽しむことができたと思われる。納涼と見晴らしを楽しみながら茶を喫する空間であり、作法としても形式にとらわれない茶の湯が展開した初期茶屋の空間は、草庵茶室につながる源流としても興味深い。

 傘亭と時雨亭は約四間分の土間廊下でつながり、柱は皮付丸太、杉皮を竹で押さえた素朴で軽快な屋根がかかり、土間は正方形の敷瓦と自然石の飛石が配置されている。

 この両亭を対にして考えた場合、傘亭には竪穴式の、時雨亭には高床式の住居を連想したりできて、その表現力には人間の住空間の根源的な想像を喚起する。緊張感と開放感が対になって表現されているように思えたり魅力は尽きない。


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