onepintのバックナンバー

Back Number
ライン

“紙幣の絵柄を広告に使っても大丈夫?”
(通貨及証券模造取締法)
 

: ある大手スーパーが、1,000円バザールキャンペーンをやろうと企画しました。1,000円で買うことのできる商品を一斉に揃えるという企画です。当社ではキャンペーンの企画・制作を提案し、その中でキャッチコピーと本物の1,000円札の写真を大きく写し出したチラシ広告案としました。
この場合、法的に問題はありますか?

: こうしたケースの場合、通貨偽造罪もしくは通貨及証券模造取締法にいう模造罪の成否が問題となります。
(偽造の目的で通貨の偽造すると、刑法148条により”通貨偽造ノ罪”として「行使ノ目的ヲ以テ通用ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ無期懲役ニ処ス」と規定されています)
ここで“偽造”とは、通貨の製造・発行権のない者が、真貨に類似した外観の物を作成することをいい、類似の程度は一般人をして誤認させる程度のものであれば足りるとされます。他方、“模造”とは真貨に紛らわしい外観を有する物を作成することとされます。今回の質問のような場合には、模造罪の成否が問題になります。
ところで、“紛らわしいかどうか”という基準では解らないので、判例を紹介します。

@飲食店のサービス券用に写真製版所に依頼して、表面を100円紙幣の表面と同寸大、同図案、同色のデザインとして、上下2カ所に小さくサービス券と記載し、他方裏面は広告を記載するなどしたサービス券(細かくは数種類)を作成したケースで、紛らわしい程度に至っているため模造罪に該当するとした事例(最高裁昭和62年7月16日)。

A広告印刷物の下段に真券である1万円札を寸法、すり込み文句などを変えて印刷した場合でも模造の実行の着手に当たるとした上で、下段を切り抜かない限りは完了しないことから、未遂犯処罰規定のない以上犯罪は成立しないとした原審(東京高判昭和48年3月5日)を覆し、かかる切り抜きなくしても模造は完了するとした事例(最高裁昭和49年7月22日)。
Aの判例はまさに、今回のような事案で、広告に寸法等を変えて片面を掲載しても直ちに模造に当たるとしたものです。判例上は裏面が白紙でも模造に当たると判示するなど、かなり厳しく判断されていることから見て、より一層安全策をとることをお勧めします。
どうしてもやりたいという場合には、見本の文字を赤字で大きく入れるのはもちろんのこと、抜き出し範囲を紙幣の一部に限定したり、もしくはサイズを一見して本物とは全く違うと分かる程著しく縮小したりした上で、さらに白黒・セピア色などにして色調を著しく変更するべきです(誰がどう観ても紛らわしくないように)。ただし、ここまでした物が果たして価値のあるものかどうか・・・との疑問も湧きますが。

大蔵省理財局国庫課の要望「メモ」として以下のような文面が出されているようです。

1、紙幣の写真版、模写をそのままの形または変形した形で広告に使用することは、通貨及び証券模造取締法に触れることとなる惧れがあるとともに、通貨の尊厳の観点から好ましくないと考えられるので一切その使用を謹んでほしい。
、臨時補助貨幣(硬貨)の写真版、模写を広告に使用する場合は、直接通貨及び証券偽造取締法に接触することはないと思われるが、使い方によって問題が生ずる惧れもあるので、その使用を差し控えてもらいたい。
なお、コインの収集に関するもの等やむを得ず広告に使用する場合は、必ず事前に相談してもらいたい。
としているようです。