|
ダライ・ラマ:チベットの同胞たちへ
《西 藏 之 頁》 (2008年 4月 6日付)より
4月6日、チベット亡命政府大乗法苑で大祈祷法会が行われ、ダライ・ラマ、カルマパ17世、亡命政府各大臣、公務員、ダラムサラの僧侶、民衆数千人が参加した。
午前9時、ダライ・ラマは宮殿から大乗法苑に赴き祈祷法会に参加、一時間後に法会が終了すると、法苑の大経堂から内外のチベット人に向けて以下のメッセージ《チベットの同胞へ》を発表した。
****************************
ダライ・ラマ十四世からチベットの同胞たちへ
はじめに、チベット全地域の全ての同胞たちに心からの挨拶を送ります!そしていくつかの問題について、わたしの考えをお話ししたいと思います。
一、チベット人は長きに渡って現実の中で民族の不平等を味わい、信教の自由はなく、"共産党こそチベット人の活仏"といった歪曲された軽蔑的な言論やなんら憚ることもないペテンに常にさらされ、大漢族主義に基づく思想と行為に侵害されることに強い不満を表してきました。
今年3月10日、全チベット(アムド、ウ・ツァン。カム)、ひいては中国の各大都市で学ぶチベット人学生たちが、これ以上我慢できないという状況下でついに平和的方法で自分たちの訴えと不満を表しました。ところが中国政府はこれに対し武力鎮圧することで、多くの死傷者をだしただけでなく、さらに多くのチベット人が逮捕され拷問や殴打に遭うという不幸な事件を引き起こしました。良識や同情心ある人なら誰しもが心痛め涙するようなこうしたことを前にして、わたしは非常な焦りと心配とどうしようもない気持でいっぱいです。
二、今回の事件で亡くなった全てのチベット人とチベット人以外の人々のために、わたしは常に三宝に祈りを捧げています。
三、このところ発生しているチベットの事件は、中華人民共和国政府の"極めて少数の反動派を除き、ほとんどのチベット人は現状に満足し、幸福な生活を享受している"という虚偽の宣伝を暴き、全チベットの人々の望みと意思が一致していることを表しています。同時に、チベット問題が無視できないものであり、漢族とチベット族双方に益となることを基本に、実際に即して解決の方向を探っていかなければならないことを全世界に証明しました。
チベット人は民族の利益を守るために心からの訴えを表し、かくしてその何ものも恐れない精神と犠牲を厭わない勇気と決断はすでに国際社会の賞賛と共感を勝ち取っています。
四、今回の事件で、チベット人共産党員や幹部の多くが自分たちの民族から離れることなく、できうる限り公正を保とうとしていることに感心させられます。将来すべてのチベット人共産党員と幹部がただ自分のことだけ、或いは目先の利益だけを考えるのではなく、チベットの環境と文化的伝統を守るために、責任をもって真実を上に報告し、人々に対しては正確公正な指導を行うことを望んでいます。
五、目下、世界の多くの国の大統領、首相、外務大臣、ノーベル平和賞受賞者、議会議員及び関係各位の方々が、中国政府のチベット人に対する残虐な鎮圧を阻止しようと、中国の指導者にはっきりと強い関心を寄せている立場を表明し、さらに中国政府にできるだけ早く双方ともに受け入れられる和解を実現するよう促しています。それゆえ、わたしたちはその努力が積極的な成果を得られるようチャンスをつくらなければなりません。あなたがたがいまだに怒りのただ中にあることはわたしもわかっています、しかしいかなる時にあっても平和と非暴力の路線に従うことは極めて大切なことなのです。
六、中華人民共和国は未だに事実を歪曲し、わたしと亡命政府が今回の抗議事件を画策扇動したと非難しています。これに対してわたしは、公に信頼性の高い独立調査組織をつくり、事件について徹底的に調査するようすでに幾度も呼びかけてきました。事実がはっきりし、真相が明らかにされることを望んでいます。もし中華人民共和国がその訴えについてなんらかの根拠、証拠があるというのであれば、国際社会に発表すべきです。そうでないなら、屁理屈をこねて自ら醜態をさらすだけです。
七.、ご承知のように、チベット民族の将来についてわたしはすでに中華人民共和国の枠の中で解決を求める決意をしています。1974年以来、わたしは終始相互互恵に基づく中道路線の立場を貫いてきました。中道路線とは即ち、全てのチベット人が一つの行政管理のもとで実質的な民族区域自治を実行するということです。それによって自らが主人公となって政治に参与し自分たちのことを自ら管理することが真に実現します。外交と国防を除いて、チベット族の指導者や幹部にチベットのことを管理する責任を担ってもらいます。もとより、はじめからすでにはっきりと申し上げていることですが、チベット問題の最終決定権は国内のチベット人の手中にあります。
八、今年北京で開催されるオリンピックは、十二億の中国の人々が待ち望んでいるもの、それゆえわたしは最初から支援する立場をとっています。チベット人がオリンピックの邪魔をすることをよいこととは思いません。平和と非暴力を以ってチベット民族の合法的な権益と自由を求めることはチベット人ひとりひとりの責任であるとはいえ、そのために漢民族の行事を傷つけるとすれば、双方にとって何のメリットもありません。真の調和のとれた社会は、互いの心の中に信頼と好感を培うことを必要とし、鎮圧によっては調和は生まれないのです。
九、わたしたちの闘いの相手は、中華人民共和国のごく少数の政治支配グループであり、漢民族ではないのです。それゆえいかなる時であっても、けっして漢民族の感情を害する活動をしてはいけません。今回の事件で、多くの漢族知識層、作家や弁護士の方々がチベット人に同情し支援する言論、文章を発表し、また法律的援助を提供したいと申し出てくださり、わたしたちはそのすべてに深く心を動かされました。
去る3月28日、わたしは世界中の漢族同胞に充てたメッセージを発表しましたが、この点をみなさんにも理解していただきたいと思います。
十、もし現在の状況がこのまま続くなら、中国政府は間違いなくわたしたちへの鎮圧を強化するでしょう、わたしはそれがとても心配です。わたしにはそうした状況になるのを避ける責任があります。そこで中華人民共和国の関係部門にチベット人への鎮圧を止め、軍隊と武装警察を撤退させるよう幾度も要求しました。それが実現すれば、全チベットの人々も抵抗運動を止めるべきです。
十一、また、自由世界に暮らすチベット人に呼びかけます。チベットの状況を説明する時、暴力を連想させたり暴力と解釈される一切の行為を放棄しなければなりません。極端な憤りや気落ちしている時、わたしたちはとくに内なる信仰の価値観をしっかり心に刻まなければなりません。わたしは、平和と非暴力の道を辿ることが、わたしたちの望みの実現につながることを堅く信じています。それゆえに特別な支援と同情を得られるのだということをわたしたちははっきり知らなければなりません。
十二、チベット内地の交通がすでに切断されているために、国際メディアも入ることができません。そこで、より多くのチベット人にわたしのこのメッセージを知ってもらうために、各種メディア、ないしは口コミによって広めることに望みをかけるほかありません。
十三、最後に、いま一度呼びかけます、どのような挑発、憤りを覚える場面に直面しようとも、断固として平和と非暴力の精神を実践し続けなければなりません。
釈尊の弟子 十四世ダライ・ラマ テンジン・ギャムツォ
西暦2008年4月6日
|